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九州の杉4 アヤスギ

木の住まい取扱説明書 木の輝きはリッチの源!

日本の住まいを良くする無垢材研究会   木の案内舎ゲインのゴトウです



 現在進行中の物件で、戸畑区のS邸。施工を担当しているT工務店の監督さんと、工期の打合せに行ってきました。


 途中10月の中下旬に開始という話が出たため、もしそうならば慌てて準備しなくてはならないため、急いで確認に行きました。


 監督さんも、そんな話は寝耳に水だったようで、スッタモンダの挙句、結局元通りの工期ということで落ち着きました。正直ホッとしました。


 ホッとしたのは良いが、他の案件は大丈夫かと若干心配になり、年内に動くであろう現場が、他に10件あるので、すべてに電話連絡をして確認を取りました。他の物件は、ほぼ問題なしでした。


 ほぼ、・・・1件だけが、残念ながら消滅。


 でもその理由が、またしても悲しい現実でした。つまり工務店主導の「予算がない」という理由で、大手のミソクソ床材に滑落(フォール・チープ)してしまっていました。


 この建築業界というか、無垢材業界では、同じ杉という名称でも、まさにピンから切りまでの幅で、商品が流通しているところが落とし穴で、施主さんが工務店にお任せすると、まず思っているものが手に入らない。


 この物件も、残念ながら、その通りの現実でした。こんなときは、建築家が間に立って、しっかりと予算配分と調整をする役割です。建築家が手を引くと、後は工務店の思いのままに料理されてしまいます。


 施主さんが望む住まいを、予算内でどうやって実現するか智慧を絞るのではなく、どうやって削るか、削れなければ、どこまで質を落とすかになってしまいます。施主さんは、工務店以外に頼る相手がいないため、結局言いなりにならざるを得なくなります。


 

 九州の杉:


 今回は九州の中北部に集中して生長しているアヤスギです。


 このアヤスギは、別名アカバとも呼ばれています。厳密には同種ではないらしい。


 この杉は、一部のビルダーが「当社の杉はアヤスギを使っています」と、一時期盛んに宣伝していました。地域的には、熊本県の最北部になりますが、九州北部全体に生長しています。このアヤスギは、分幹性といって、幹が根に近いところから分かれて生長する特色があります。


 他の種類の杉にも、その性質がないわけではありませんが、アヤスギはとりわけその性向が強いようです。


 杉は度重なる植林によって、少しずつ植生が変化したようで、現代の杉のほとんどが、根を深く同時に広く張らない木になっています。でもこのアヤスギは格別で、かなり深く広く根を張るのが特徴です。


 個人的には、好きな杉のひとつでもあります。アヤスギは、赤みが際立っています。幹は通直ですが、アテの多い方かもしれません。年輪が正円ではなく、若干波打っているため、板にすると笹杢のような木目が現れます。


 油脂分が多い木のためか、最初からある程度の艶を持っています。当然ながら、経年変化で飴色に変わる時期も早いようです。杉の良さは、何といっても赤みと杢目の美しさにあります。そのためには、杉が持つ油脂がそのまま保たれていなくては意味がありません。



 最近は、猫も杓子もKD(人工乾燥)が最優先されていますが、ホントは本末転倒の破壊的な行為でもあるのです。


 人工乾燥を施すと、確かに木の強度が増しますが、そのために木が持っている成分を排出して、何の変哲もないスカスカの木にしてしまいます。木の持つ油脂や耐湿成分を抜いてしまい、木の表面は、何の艶もないパサパサの半焦げ状態になります。


 果たして、そんな処理を施した木が、人の生活空間に、どんな影響をもたらすのでだろうか。私からいえば、人工的「枯れ木」にしか見えません。


 次回は、八女杉です。



ホームページ→ http://www.h3.dion.ne.jp/~yamaiti/
by MUKUZAIKENKYU | 2009-10-06 10:09 | 木 無垢材 自然
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