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乾燥木材の裏事情

日本の住まいを良くする無垢材研究会 
 
                     住まいの木案内舎ゲインのゴトウです



 ところで、木造建築での主役は、当然「木」である。

 だが、実際に建ったとき、屋内に入って、主役たる「木」を見ることができるだろうか?


 主役がいて、いない。そんな建築物は、「木造」とはいわない。木下地造というべきだろう。

 そんな馬鹿げた工法がまかり通るために、木には別のリクエスト、否デマンドが課せられるに至る。


 それが乾燥材である。

 天然乾燥とは、文字通り天日に晒して乾燥させる方法。人工乾燥とは、重油を燃料とした加熱乾燥である。

 今では化石燃料を使用して乾燥させる方法は、時代のエコロジーとは真反対であるため、いろんな乾燥方法が試行されている。


 この乾燥材が要求され始めた原因は、木と木を緊結させるための金物が、乾燥による縮みによって弛むことを予防するためである。

 さらにいえば、木の乾燥に伴う収縮が、家全体の歪みにつながって、強度上問題があるということである。そして割れは、木自体の強度に影響するが如くいわれている。

 一部の無知なユーザーが、乾燥に伴う割れの音に神経質な反応を示し、また一部の無知な工務店が、そんな「クレーム」に恐れをなした結果のようである。


 本当の原因は、乾燥によって弛む箇所が発生するのではない。木と元々相性の悪い金物を優先した工法を求めるから、「弛む」と判断してしまう。

 木と木とをしっかり緊結する工法は、いっちょまえの大工なら、皆知っているし、できることなのだ。

 金物で緊結しようとするから、話がひっくり返ってしまうのである。

 木は木で緊結しなければならない。ちょっと冷静になって考えれば、馬鹿でも分かることである。


 そしてそれを可能にするためには、木は特段乾燥材でなくても問題ないという事実を知らなくてはならないだろう。

 先人は、その時代、じっくり時間をかけて、天然乾燥を施した。しかしそんなもので、完全に木は乾燥することはない。ある程度乾燥したら、後は乾燥の代(シロ)を考えて、つなぎ手やホゾを講じる。

 そのための継ぎ手は、一千年前以上から、実に豊富に創造されて来たのだ。

 そういった伝統を無視して、市場原理に媚びへつらう仕様を優先すれば、日本の建築物が、これからどうなるか、学者や専門家でなくても分かることだと思う。


 本物の家づくりでは、人工乾燥された構造材など、本来無用なのである。


住まいの木案内舎ゲイン
by MUKUZAIKENKYU | 2010-08-05 09:53 | 木の家 国産材 無垢材
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