日本人が日本人であることに気付くとき その3
日本人は、森にはその森の神が住み、木には生命とともに魂があると感じてきました。
巨木の室の中に梟が巣を作っている写真や番組を見た方はたくさんいらっしゃるでしょう。それは単に木の中に鳥がすんでいるだけの光景だったでしょうか? 大きな室が出来た老木は、梟と共存しているような雰囲気を感じ取ってみていたのではないでしょうか? 熊も冬眠するとき、そこを住処にすることが多いのです。 有名な彫刻物の素材のほとんどは木です。それは彫刻をしやすいというだけでなく、木に永遠の生命を見ていたからだと思います。 もちろん木が腐れることも知っていました。日本独特の防腐剤も、当時から開発されていました。漆喰や漆器などはその典型です。 飛鳥時代から主な建造物のほとんどは木造でした。江戸時代まで、そうでした。火事などの災害は、現代より遥かに多い時代であったにも拘らず、皆木によって家を建てていました。 それはある意味では、火事などの災害に合おうとも、それと比較にならないほど、木に優れた性能を見ていたからではないでしょうか?家としての性能もあります。それは人が生活をする空間です。人が集まる場所でもあります。 先人の知恵には瞠目に値するものがたくさんあります。 日本の建築の文化は、木の文化でもあります。それを飛ばして、塩化ビニールだのウレタンだの、プラスティックや鉄、コンクリート等の石油加工製品や鉄鉱石、石灰石の二次製品に偏向することは、どうしたものでしょうか? とりわけ日本の家は、店舗ではありませんし、ショーウインドウでもありません。 なのにそういった非木系材料で、特に石油加工品ばかりで生活空間を覆ってしまっては、日本人の培ってきた自然に対する繊細な遺伝子を断絶することにつながってしまうのではないでしょうか? 一本の木の柱があります。樹齢100年の木としましょう。あなたの目の前にある柱の杢目(もくめ)は、この世にたった一つしかない姿のものです。 石油化学製品や鉄などは、同じものを繰り返し生産できます。元がどろどろの液体ですから(鉄も溶かして製品にします)、ひとつの鋳型にはめて、無数の同一物を「生産」出来ます。 しかし木の場合は、人との出会い以上に一期一会なのです。 人工的に同じ肌理の木を作ることは出来ないのです。 鉄等の金属やコンクリートは、その生産過程で、大量の石油を消費します。即ち大量のCO2を発生させます。 木はどうでしょうか?石油を使うときは、材料を運搬するときだけです。それ以外では、皆さんもご存知のように、CO2を吸収し、大量の酸素を空気中に放散します。 石や石油は発掘してしまうと、再生することは二度とありません。木は計画的に植林と伐採を繰り返すことで、半永久的に確保できる資源です。その資源の元になる山が、日本には圧倒的に多く存在しています。 それなのに、どうしてわざわざ高いお金を払って、ビニールやら鉄を優先して手に入れる必要があるのでしょうか? 我々日本人が日本人であること、その心の豊かさと繊細さという意味での美しい遺伝子を絶やさず、新たにスイッチをオンにするためには、木という存在と面と向かい合うことは、何よりも大切なことだと思います。
by MUKUZAIKENKYU
| 2005-11-15 08:38
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