直接関係ない業界のことだけど

構造計算偽造事件について

 あ~あ、やっちゃった。ついに綻びが出たか!という印象です。

 10数年前から、木造住宅の欠陥が指摘されてきました。基礎のつくりから土台や柱などの構造材の設置の仕方まで、いろんな角度から、これは欠陥だ、あれも欠陥だと、当時食いっぱぐれてた一部の建築士が、突然正義の味方ぶって、テレビに登場しているのを見て、苦々しく思ったことがあります。

 今はリフォーム詐欺が取りざたされています。

 そしてついにRC(鉄筋コンクリート)SRC(鉄骨鉄筋コンクリート)など、いわゆる箱ものと呼ばれる建築物に、その矛先が到達しました。

 登場の仕方が如何にも箱物らしい複雑さです。木造住宅と基本的には変わらないのですが、木造住宅では1家族からせいぜい10家族までが、規模の限度でしょうが、箱ものは規模が桁違いです。

 関わる企業や人の数も、比べ物にならないほど多い。

 建築主、設計事務所、施工業者、それに関係する多くの下請業者の一括りの中で、欠陥工事を直接行うのは、すべて下請業者です。
 そのパターンもいろいろあります。


(ボトムアップのケース)
①次の仕事を駆け引きの道具にされて、しぶしぶ赤字工事を受注した結果、つい手抜き工事をやってしまった。(このパターンが一番多い)

②元請から手抜き工事を指示されてやってしまった。(専門職なので、こんな工事をしたら、ユーザーが大変だと分かってはいたが、元請の監督から工事費を抑えなくてはならないのでと言われ、結果的に手抜きをしてしまった)

③専門職なので、こんな図面ではまともなものは建たないと、図面の書き直しを要求しても、聞き入れてもらえなかった。仕方がないので、その通りに施工した。

(トップダウンのケース)
④建て主には予算を予め設定されているので、その中からやりくりをせざるを得ないため、金額の張る業種から値引き要請をする。相手が赤字に陥ろうと知ったことではない。受けた限りはまともな仕事をさせる。下請は請負(うけまけ)だから、後は自分の責任でやってもらうしかない。

⑤建て主から見れば、元請のゼネコンも、設計事務所も、下請業者に過ぎない。そこから先の業者など把握できるわけがない。

 そのほかにもいろいろあります。でもこのぐらいにしておきましょう。

 木造住宅の欠陥が指摘されて、その技術とか構造とかが主に槍玉に上がっていました。

でも本当の欠陥工事の温床は、別のところにあるのです。

 それを追求する動きはほとんどありませんでした。マスコミはネタになる、見ものになるソースにしか興味がないので、そこまで関心を持ちません。

 今日のテレビでも、デベロッパーの社長が生出演して、コメンテーターからぼろくそに追及されていました。ちょっと同情しました。
 ほんとのワルは、22日に不渡りを出して、自己破産の動きを見せているK建設だと思います。
このK建設が、すべての内情を知っているからです。家宅捜査や司直の手が及ぶ前に、さっさと空にしてしまった。36計、逃げるに如かず。

 この業界の悪しき慣習があります。もちろんすべてが染まっているのではありません。
 健全な経営をしている全うな会社や個人はたくさんいます。

 しかしあくどいやり方をするものほど、見た目は大儲けします。それは自分だけが得をして、その他に損をさせた結果です。
 下請業者は、どこかで損を補うために、そのあくどいやり方を真似します。悪癖ほど感染しやすいものです。そして一旦これに染まると、ちょっとやそっとでは抜けられなくなります。
 これが抽象的にいうと、WIN-LOSEの連鎖構造です。

 この関係はすべて損得のお金が衝き動かす取引です。

 本当は常識的に考えれば当たり前のことなのですが、この業界のあるべき姿が、全く逆立ちしてしまっているのです。
 すなわち発注者がいて、設計事務所、施工業者、納材業者が、ひとつの物件を担当しますが、元請(発注者から最初に全体の工事を受注するもの)がどこになるかで、大きく変容してしまうのです。

 本来は発注者(依頼人)から設計事務所に設計の依頼が入るところから始まります。設計事務所が図面を揃えて、入札を開始し、落札した業者にすべての施工責任とともに、発注者(依頼人)と直接契約という流れです。

 この流れは不動です。逆の流れはありません。だから健全性が保たれるのです。

 機能が正常であれば、それぞれの立場のものは互いに独立していなくてはなりません。
 それが日本ではデベロッパーという箱もの専門のメーカー業者が実権を持っています。住宅であれば大手のハウスメーカーになります。
 彼らが依頼主であり、建て主だからです。しかも大量にまとめて発注するため、売上も期待できます。その代わり利益は悲しくなるほど低い。

 仕方ありません。自分の力で依頼主を探し、契約する(ここまでの段階が最も経費がかかる部分です)わけではなく、先方で見つけてくれるのですから、経費がかかりません。
 だから安く買い叩かれるのです。

 個々の住まい手などの依頼主とこういったデベロッパーやハウスメーカーとは、同じ発注する側にありながら、全く立場が異なります。
 個々の住まい手が依頼する場合は、リピートがありません。ほぼ一過性です。
 その点彼らはリピート発注をする建て主でもあるのです。(本当はその上に個々の依頼主がいるのですが)

 彼らが実際に独立して、独自の規律を持っていればまだいいのですが、そのほとんどが特定のゼネコンや工務店と「特別に」親しい関係にあります。
 片方が安くさせようとして、「次の物件」を餌にして元請を従わせます。元請は元請で、「次の現場でこそ損を取り返す」とくっついて離れません。
 離れられないように、いろんな仕掛けを演出します。

 最初は礼儀を通していても、いつの間にか馴れ合いと持ちつ持たれつの関係に嵌ってしまうのです。
 そうなると、隠然と威張り始めるのが、元請業者であるゼネコンや工務店です。

 そこら辺から、設計事務所と元請業者の関係が逆転してくる要素が生まれるのです。
 全体的な流れとして、設計事務所の二極化が進んでいることも一因でしょう。
 しっかりした意匠性と技術力を持った設計事務所と、そんな力も技量もないため、どこかの団体に所属しておこぼれを待つか、どこかの大きな設計事務所や工務店の下請専業になるか、です。

 私が勝手に思うのは、設計事務所というより建築家の矜持を持っているならば、安易に受け皿団体のような組織には加盟せず、自力で自分だけの世界を創るのでなくてはならないと思います。
 確かに自分だけの力では足りないこともあるでしょうが、もしその建築家が人を大事にして、信頼関係を地道に構築している人であるならば、今は苦しくても、必ず協力者が現れます。必ず救いの手が差し伸べられます。

 その逆に自分のことしか考えないで、私は住まい手の味方だと言いながら、実は損得勘定ばかりで動いていることに気付かない人は、やがて孤立します。誰も情報を持って来てくれなくなるでしょう。予算監理と称して、自分の予算は一銭も引かずに、業者に無理難題を押し付けたり、ここで従わないなら後の物件はやらんぞと脅しをかける人もいます。
 これでは悪弊に染まった一部のゼネコンや工務店と同類です。

 本当に住まい手のことを考える人であるならば、(とりわけ設計事務所は住まい手の唯一の味方であるはずです。)無心にならなければ出来ない仕事だと思います。


 これは大手の話です。と言いたいところですが、情けないことに、小さな小さな工務店にも、こんな悪癖を持って仕事をしているところがあります。よほど痛い目に合ってきたのでしょう。
 地方やその町だけの零細ビルダーも、そんな悪弊に染まっているところが多いのです。

 そういう小さなビルダーや設計事務所は、口先だけの誘導をするだけで、取引している業者はほとんど烏合の衆、独自の技術や製品を持っていない単なる工事屋か流通業者のありふれた集まりです。意外と本人が一番染まっていることに気付いていないのです。そういうところから建てられる家は、ある意味では大手のハウスメーカーより悪い。

 だからいい家が建たない。

 今回の問題も、この悪しき慣習の膿が出たということです。

 最も損をさせられているのは、利用者であり、住まい手なのです。もっとまともな業界にならなければ、21世紀には生き残ることはできないと思います。
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by MUKUZAIKENKYU | 2005-11-24 15:26 | 材木・建築業界
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