建築基準法の抜本的改革をしましょう

 建築基準法はいつも何か問題が起きるたびに、まるで修繕工事をするかのように継ぎ接ぎの法律を制定することで切り抜けてきました。

 道路行政を含めて国交省の行政能力は実質的に破綻しているのではないかと思います。

 現行の建築基準法では、防火地域内での木造住宅は造れないことはないのですが、多くの規制がかけられ、きわめて造りにくくなってきています。
 その詳細については述べません。むしろそういう基準や条件を、どのような価値観から作成したかを確かめることが必要です。

 詳細から判断すると、家屋自体が燃えにくいように主要な構造物(柱や梁など)を不燃材料で覆い尽くすことを条件にしています。また外部からの火災が自宅に延焼しないように外部を不燃材料で覆い、窓についてもかなり細かく注文をつけています。一階部分には特に厳しい条件をつけていました。
 目的は自宅の火災時に45分間は燃え落ちない、避難する時間を確保するということ。類焼や延焼を予防すること。この二点に絞られると思います。

 でもこれで本当の目的は達成できるのでしょうか?

 この20年間で大きな動きがあったものとしては、業者の手抜き工事防止、耐震性能の向上、シックハウス対策の三点ですが、これらの問題には場当たり的な法律が作られました。
 今回の耐震偽装事件は、今までの建築立法と行政が何ら適切に機能していなかったことを露呈しました。

 法律の背景にあるそのときの価値観を洗いなおす必要があります。価値観が変化すれば、立法当時の法律の延長線上で諸々の法律が糊塗されていますが、所詮想定の射程が違います。単なる継ぎ接ぎで賄えるような幼稚なものではないのです。
 街づくり・住宅行政、建材ルートと質、作り手の透明化と曖昧さを残さない明確な責任範囲の設定と責任負担等々、その中のどれひとつとってもまともに整備されたものがないのが実情です。

 上記の防火措置としての法律は、阪神大震災時から徐々に厳しく設定されてきました。住宅密集地ではとりわけ厳しい基準が作られたため、以前からあった木造住宅はまるで爆弾を抱えているような目で見られています。

 今の建築基準法に従えば、住宅密集地では鉄骨製かコンクリート製の建物は優先的に造ることができます。これ自体街づくりの視点からいえば論外の基準です。
 これだけでヒートアイランド現象を加速させるだけです。さらにコンクリート製の建物は基礎を木造のそれより遥かに大きく深く作らなければならない。そんな土地がないから住宅密集地というのではなかったのか。また無理に作れば隣家の基礎に影響して家屋自体を傾かせる可能性が高まります。

 また鉄骨製の家屋が木造住宅より、何が有利なのでしょうか?
 燃えない?強い?腐らない?
 もしそんな発想で、現行の法律を作った官僚や一部の見識者と呼ばれる学者は、おそらく日本人ではないと思います。

 鉄骨製の家屋では火災が発生した場合は僅か600度ぐらいから構造体の鉄は限りなく強度が低下し、アメのようにだれてしまうのです。木の場合はそれぐらいでは燃えたとしても強度はほとんど変わりません。
 そう考えると、法律が推奨している鉄骨製の家屋で、仮に火災が発生した場合、たしかに延焼を抑えることはできるかもしれませんが、火災が発生した家屋の住民は熱でゆがんだ自宅から逃げ出すこともできず、焼け死ぬことになります。

 ついでになりますが、建築基準法での木造住宅の耐用年数は30年、RCの建物は60年と規定されています。
 木の建物の優れた文明を持つ日本にあって、こういった発想で法律を作る一部の官僚や学者は、一部の産業の代弁者なのでしょうか。日本の素晴らしい文化や文明を無視して、むしろそれを根絶やしにしようと目論んでいるかのように見えます。

 事実は木造住宅は100年以上の耐用年数を元々持っているのです。RCの建物こそ、その原料となる砂質の劣化がひどく、50年も持たないのです。
 それを今でもそのまま放置しているのは、信じ難い事実なのです。

 もうひとつこの法律が日本の住宅に及ぼした致命的な悪影響は、木造住宅を30年の耐用年数にしたことで、日本のほとんどの建築業者が30年持てば十分な木造住宅を造ることに専念したことです。日本の建築業者から木造建築物を作る人間から良心という魂を抜いてしまいました

 法律が手抜き工事の木造住宅を推奨しているからどうにもなりません。まともに考え、まともに施工すれば、日本の木造住宅は黙っていても(メンテナンスは必要ですが)100年は持つのです。
 自社の物件は100年持つと吹聴している一部の業者がいますが、その会社ができて50年も経っていないのにどう証明するの?と問い正しくなりますが、まともな考えを持っていればちゃんとした家屋を造ることに専念します。そうすれば間違いなく100年は優に持つ家ができるのです。

 元々法律に従って手抜き工事で造った家ですから法律違反ではないにしても、日本の家の質は目も当てられないほど低下してしまったのです。だから「安い」のは当たり前なのです。
 大手のハウスメーカーも地場のビルダーも、そろそろことの真実に目を覚まし、本心良心に従ってまともな日本の家を造るのでなければならないと思います。

 …でもね、「安い」と謳って販売している業者を見ると、思わず非国民と叫びたくなるのです。本当はこれほど高い家はないのです。30年経ったら建替えなければならない家とは、まともな家の最低でも3倍以上のお金が掛かるのですから。

 立法府も行政府も、縦割り行政の権益にしがみついて、アナクロな法律を維持しながら、一部の産業の息が掛かった一部の学者を登用する悪癖を止め、日本の心性にあった街づくりや町並み、孫子に引き継ぐことができる木造家屋、設備や奇を衒った工法によらないまともな設計を施した住宅、釘や金物をできるだけ使わずに100年持つ家づくりをする業者こそを称揚しなければならないはずです。
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by MUKUZAIKENKYU | 2005-12-25 10:41 | 材木・建築業界
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