想いのない新興住宅地は家をダメにする?

 土地の開発業者が宅地を造成し、そこに多くのハウスメーカーや地場ビルダーが競ってそれぞれの家を建てています。
 新しく造成したのですから、当然新しい街ができます。そこの風景はまるでステロタイプとデジャブを絵に描いたようなモドキ住宅がひしめき合っています。
 謳い文句だけですが、坪20万円台の家から50万以上はする家など、または建築家が設計したと思われる家の横にメーカー製の季節感の全くない既製品住宅(住まい手は自分だけの家と思い込んでいますが)が建っています。

 何かバランスが悪い街並みです。開発業者が景観規制や街並みイメージをただの道路づくりと勘違いしているようなところです。
 そして最近流行の一種異様なパステルカラーで塗装されたおもちゃのような家が建ち並んでいます。ロープライス住宅(ローコストではありません)の横に本格的な家が建つと、途端にそのロープライス住宅はいかにも貧弱で厚化粧をして地を覆い隠しているあばら家に見えてきます。そしてどんなにいい家も、何かしら浮いてしまって締まりがありません。

 一時ホーメストというメーカーが里山を切り開き、自社だけの家で街づくりをしたことがありました。計画は3分の1ぐらい進行して、その後売れずにあえなく挫折。
 原因はそのメーカーの街づくりの発想が単に団地を作り、出来るだけ多くの家を建てるという単純な考えであったこととその既製品住宅が他社のそれと比べてもあまりに貧弱だったため、一種のゲットーのような景観になってしまい、住まい手からも敬遠されてしまったことにあります。

 安かろう悪かろうの典型でした。この反対に高かろう良かろうもありますが、メーカーがどんなに広告しても「安かろう良かろう」はありません。安いのは安いなりの出来なのです。
 
「こんなに安くて、こんなに良い家!?」みたいな広告を良く見ますが、家は見かけではありません。家を判断する基準にはいろいろあっていいと思いますが、家は住み心地であり、耐久性を前提にするものでなくてはならないと思います。
 一般的に宣伝されている「安くていい家」のほとんどは、見掛けが良いだけの持ちの悪い家だと思って間違いありません。

 もうひとつ、それは大手になればなるほど巨額の宣伝費を使って集客を図ります。思惑以上の契約ができれば、住まい手が宣伝費を支払う割合は減りますが、中小のメーカーやビルダーが多くの宣伝費を使うと、とんでもないぼろ家ができることになります。
 宣伝費を契約料で吸収できる率が圧倒的に悪いからです。大手のように量で賄えないため、一つ一つの家に宣伝費の回収が大きく乗ってくるからです。

 中小零細企業で宣伝費に多くの金をかけている企業は、いずれ間違いなく電話帳から消え去る運命にあります。

 それにしても直感的にバランスの悪いこの住宅地、既にある程度街並みが出来上がりつつあるのですが、その原因のひとつは、単に家の価格帯によるものではありません。
 今まで聞いたこともないような、なにやら理解しにくい「独自の」工法による多種多様な家々、西も東もないてんでばらばらな玄関の位置、隣り合う家同士であっち向いてホイをやっているようです。

 流行のいろんなパステルカラーで仕上げた家々、瓦の色も空から見るとまるでペンキをぶちまけたようです。輸入住宅があれば、レンガ造りに見せかけた外壁版で蔽った家がある。
 戸建て住宅の群れの中に割り込むようにして賃貸住宅が建っています。
 と思うと、Sハウスの家並みが十数棟続くと、今度はDハウスの家並みが現れます。○○ホームが数棟あったと思ったら、忽然とT建設独特の家が数棟置きに七八軒建っていました。
 暫く行くと、200メートルの長さに道路の左右に有名無名のメーカーの家々が一軒ずつ建っています。住宅展示場のそのまま転売エリアでした。

 家の向きもバラバラ、形の統一性も全くない(同一性ではありません)、…中にはおおっと目を見張る家が一二軒ありましたが、それだけでした。

 …さてこの新興住宅地には将来にわたって財産価値が高まるような意匠や工夫がなされているとはとても思えません。
 普通常識的には、街づくりは意匠専門の設計事務所が関わるはずです。都市計画まで行かないまでも街づくりのコンセプトをきっちり前面に出して、その条件に柔軟に適応できる家づくりを認め、将来の道路名などに応じた家並みを考え抜くものです。

 この宅地はまだ未完成ですが、街の文化は、無計画なやりっ放し意匠のためか、町全体でチンドン屋をやっているようにしか見えません。

 個々の家々が街並みを作り、独特の景観が生まれ、そこの街の価値を高めもすれば低めもします。

 あるデベロッパーが供給している家は、表向きは無垢材といいながら、ウレタン塗装品のベニヤ板床材を標準仕様にしたロープライス住宅ばかりですが、団地作りは旨くて、○○村という表現で自然回帰を促しながら、住宅周辺に空間的な余裕を大幅に作ることで人気を得ました。
 供給する家が3流でも、街づくりの発想が旨ければ、それなりに結果を出すことにつながるのです。
 その逆の例が今回の新興住宅地です。街づくりの計画性が道路整備ぐらいで、コンセプトがないためいろんな階層の家が並立したため、どの家もしっくり納まっていません。

 一般的に高級住宅街と呼ばれる街にはそれなりに根拠があります。住民に高所得者が多いというのは結果です。地盤と環境が良いために良い家が建てやすいのです。
 中には見栄だけで無理をして家を建てるユーザーもいますが、その価値はあります。財産価値が高いからです。家そのものの財産価値は法律から見た判断で決まりますが、実際の売買では街並みが重要な価値基準になるからです。
 どんなにいい家であっても、周囲の環境が悪く、地盤が軟弱で湿気の多いところは運気自体を下げてしまいます。そして実売買基準は法律判断よりはるかに低くなってしまいます。

 夢のマイホームを持ったばかりの住まい手ばかりで出来上がった街です。悪くは言いたくないのですが、土地の開発業者(デベロッパー)の意識程度で、こんなにも街並みに差が表れるのかと証明できるいい見本だと思います。

 本当にまともな住宅地を構想するならマンションなどもある程度配置されるはずですが、おそらく地盤に問題があるのでしょう。

 一部のメーカー独占団地は見る価値もありませんが、こういった“何でもあり”団地では街自体に新たな価値が生まれないと思いました。
 
[PR]
by MUKUZAIKENKYU | 2006-01-12 19:09 | 木 無垢材 自然
<< メーカーによるメーカーのための... 一向に改まらぬ材木・建材業界について >>