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家・住まいの健康 その7

 未乾燥の木の柱や梁で造られた家は、その時点では本来の木の強さを発揮できません。

 とはいえ、だからといって家が建たないか、建ててもすぐに壊れるのかといえば、応えはノーです。

 実際に全国各地で、この瞬間にも木の家の上棟が行われているはずです。上棟の最中に倒れたなんて話は聞いたことがありません。これは事前に柱や梁がバランスよく配置されているから、つまり一本の柱で家屋の全荷重を支えているのではなく、多くの柱や壁で荷重を分散して、地上に逃がしているために倒れないのです。

 前回では強度の観点だけから言えば、集成材を使って建てた家は、住まい手に引き渡したときがピークパフォーマンスで、それ以降は徐々に接着剤の劣化とともに強度は劣っていきます。

 未乾燥の家も、同様だと言いました。その理由は未乾燥だからというのではなく、上棟して以降徐々に乾燥していきながら強度は増していくのですが、乾燥による縮みという点からは強度上の問題が増えるということなのです。

 未乾燥状態の木は、乾燥途上で独特の動き方をします。この現象が建築施工上あるいは住まい手が生活する上で支障が生じるとき、俗に「暴れる」と呼びます。

 木の特徴のひとつに、調湿効果があります。つまり外気が乾燥していれば、木自体に含まれている水分を放出し、その反対に外気の湿度が高くなると、その湿気を木が吸収する「動き」を指します。
 その結果、室内の湿度が常に一定に維持されるため、その中に住む人にとっては、いつも快適さを得られることになります。木の家の最大のメリットといってもいいと思います。

 ところでそういう木が、家に用いられるためには、まず立ち木の状態時での含水率はかるく100%であるため、使用に耐えられるまでの含水率に落すための乾燥する期間が必ず必要になります。

 一般的に柱等の構造材用として市場に出回る時点では、含水率は30~40%はあるでしょう。じゃあ出回った瞬間に売買された木は、すぐには使えないじゃないかという反論が予想されますが、実際その通りなのです。

 本当に木の家やそこに住む住人のことを考えれば、含水率がしっかり落ちるまで絶対に手を出してはいけない代物なのです。

 ここからいわゆる「市場原理」という“業界の常識は世間の非常識”が横行するのです。

 この「市場原理」については、今後の『家・住まいの精神』編で詳しく述べるつもりですので、ここでは結果だけを述べます。

 この「市場原理」が働くと、正義なんて何の力もありません。
 正義とは、本心良心に悖らないことです。


 そのため未乾燥材というより、ズブズブの生材が堂々と販売されるのです。生産者から材木屋や大工工務店に、それはハウスメーカーや地域ビルダーを通して、家の部材として住まい手に渡されます。

 生ですので、水ぶくれのフニャフニャで、木本来の強度など望むべくもありません。

 鉋をかければ中の水分がどんどん出て来ます。柱として立てれば、土台との接合点周辺は落ちてきた水分でビショビショになります。梁として使うと、スパンが広ければ広いほど自重でだれてしまいます。

 そしてじわじわと乾燥するに連れて、乾燥による収縮が始まるのです。生材は釘などの金物を錆びさせる一因になります。

 折角土台と柱、柱と梁や桁は寸分の隙間もなく緊結されていたにも拘らず、この収縮が進むに連れて、少しずつ隙間が生じ、ボルトは緩くなってしまうのです。

 生材で造られた家は、上棟後一年も経つと、しっかりと締め付けたはずのボルトが指先でくるくる回るほど緩んで、縮んでしまうのです。

 その意味から、引き渡したときが強度のピークといったのです。それは木本来の強度ではなく、家全体の締まりという観点からの強度です。 

 生材が乾燥すると、単に収縮するだけではありません。もうひとつの問題が同時に発生するのです。
by MUKUZAIKENKYU | 2006-06-15 14:32
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