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家・住まいの健康 その9

木造住宅の法定耐用年数は何年だと思いますか?

22年、です。

住宅ローンの最長契約年数は? 30年です。

22-30=-8年

 自分の家が法定耐用年数通りに22年で老朽化して建替えなくてはならなくなっても、その家のために後8年間は余分に返済し続けなくてはならないことになります。

 これでは家に投資する人はいなくなります。でもこれはあくまで自己資金の足りない人が家を持つ場合のことです。

 戸建ての自宅が欲しければ、まず自己資金ですべて賄えることを前提に考えた方が利口というものです。

 でもたった22年間しか持たない木造住宅とはどんな家なのでしょうか?
 「安かろう、悪かろう」の家です。

 何でも安いに越したことはありません。しかし見境なく安いものを求めれば、本当に良質の世界から三行半を突きつけられるでしょう。

 一般的な傾向ですが、無数ある「総合建設業」を名乗る一般工務店では、この傾向が特に強くなります。安いものを求めすぎて、自ら本物の世界との縁を切ってしまうため、本当にいい物を求める住まい手には全く対応できないのです。

 このことを「ローコストにはまったローリング・ドロップ」と言います。つまり自分で自分の首を絞めて、窒息しそうになっても気がつかない状態です。

 王国を見たこともない者に王国の話をしても通じるわけがありません。王国に入るにはコストがかかります。誰でも彼でも入れるわけではないからです。真剣に求める者にのみ門戸は開かれます。だからその人には熱意というコストを当然のように要求します。

 そしてそれが理解できる者だけが初めて知りうる世界を経験できるのです。

 22年でも、以前の30年でも、大して変わりません。木造住宅をなめきった定量化だと思います。なめられる木造住宅業界にも問題はあると思います。

 誤解を恐れずにいって、戦後高度成長期から始まった住宅ブームの際から、すべてではありませんが、多くの地域で「住宅のバラック化」が促進されました。

 そしてその当初は一棟の家を建てるのに、最低でも6ヶ月間から1年以上の時間をかけていました。ところがツーバーフォー住宅などの輸入住宅が導入されるようになって、工期の短縮が最優先課題になってきました。

 在来工法とアメちゃん工法とでは、元々発想から異なるのですが、単なる見かけだけの比較に走った一部のハウスメーカーはそんなことも理解できずに、現場の生産性を至上課題にしました。

 建築現場の生産性を追求するのに適したものが、いわゆるツーバイフォー住宅です。この工法には、大工は要りません。つまり大工の腕を見せるところがない工法であるため、如何にして一日でも早く家を建てられるかが比較基準になるのです。

 このことは、家・住まいの精神と社会編で述べるつもりですが、いわゆる木造住宅の質の低下を招いた原因のひとつでもあるため、敢えてここで挙げて見ました。

 木材流通の世界では、このような動きに対してどのように対応したのでしょうか・

 一部の輸入業者がいわゆるツーバイ材を仕入れるようになって、国産材は駆逐される動きがありました。それほどまでに国産材の質は低下していたと言っても過言ではないでしょう。生材で、しかも樹齢が30年行かないような木を市場に流していたために、乾燥による痩せ(縮み)や暴れ(反りや割れ)というクレームにはほとんどの業者が無頓着でした。

 ツーバイ材は、その点生産を追求する米国にあっては人工乾燥は生産工程に元々組み込まれていたために、日本に上陸すると、たちまち人気を博したのです。しかも米国産の木は日本のような中小径木ではなく、大径木ばかりですので、ある程度品質が均一でもあるため日本国内にあっても重宝されたのです。

 しかし悲しいかな、米国産の木は少雨の温暖な気候の元で成長した木ばかりです。日本のような高温多湿でシロアリの多い土地ではひとたまりもありません。

 それにこの工法には、日本のような家屋に絶対不可欠の柱や梁に該当する材料がありません。すべて間仕切という壁、床剛性をそのフロアだけで完成させる方法ですので、小さな部材をいくつも重ね合わせて使うために、日本の家づくりの基本である「出来るだけ金物を使わない」という発想とは真反対の「出来るだけ多くの金物を使う」のです。

 とはいえ市場原理が働き、国産材は二等品扱いされるようになりました。工務店が買い叩き、それに輪をかけて材木屋までも国産材を買い叩きます。

 フィーバーという病気に犯された不健康極まる市場に翻弄されたのです。

 本当ならば、この動きに対して心ある建築家や材木屋が声を大にして市場を健全化しなければならなかった。実際に鑿(のみ)を入れる大工さんには情報を発信する力が足りませんでした。

 米国流の生産性と在来工法での生産性とは、使う部材から異なるため、同じショーケースには入れられないものなのです。
by MUKUZAIKENKYU | 2006-06-21 17:51
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