材木屋が考えたトータルな木の家の提案 その5
ある人が買い物に行った際に、同じ商品なら、当然安い方を買います。しかしたとえ安くても、交通の便が悪かったり、取寄せに時間が掛かるようでは、多少高くても、便利な方を選びます。
また安いものにはそれなりの理由があります。流通経路を簡略化することが手っ取り早く、また確実に価格を抑えることができます。または少量を買うより、多量に買う方が値段の交渉はしやすくなり、いわゆるスケールメリットを生かすことが出来ます。 そのふたつのことを同時に行えば、更に価格は安くできます。 建築の世界で言えば、地域の中小工務店が年間に10棟家を建てるとすれば、大手の住宅販売会社は、全国規模で数百棟家を建てるとき、前者が地元の販売店から仕入れるのに対して、後者はメーカーと直接契約をして、地元の工務店よりはるかに安く仕入れることが出来ます。 資本主義の世界は、どれだけ取引先に対して多くのメリットを提供できるかが価値の絶対的な基準になります。そのため大手はそれだけで地元の中小工務店を圧倒できるのです。 ただこれには大きな落とし穴があります。大量仕入れでコストを下げることは出来ますが、(それを宣伝しているメーカーもいます)では大量に仕入れた同一商品は、その結果どこに行くことになるのでしょうか? 北海道から九州まで、地域特性や気候風土が異なるところでも、その住宅会社から家を建てることになれば、すべて同じ商品があてがわれることになります。 ○○シリーズと称して、同じ形の家を、どこにでも建てようとします。 これを住宅会社は「分譲住宅」として販売するのですが、実は「分譲」ではなく、予め既定の路線に乗った「建売」でしかありません。ただ建売として販売すれば商品価値が下がるため、一応住まい手のお客さんには、提携している建材・設備メーカーのカタログから「選択」しているような錯覚を演出します。 これが「安さ」を演出する方法です。でも実際には、住まい手には選択の自由は予め奪われているのです。 では材木の世界で、国産材は高いとイメージを持たれている方が多いのですが、逆の意味で、これも同様の原因が背後にあります。 それは物流と商流の障害です。 まず物流の面から見てみます。最近では近くの山の木で家を建てる運動が活発になっていますが、その言葉だけから考えれば素晴らしいことです。余計な物流コストを抑え、地域材の生産再生産の循環を作ることによって、森林荒廃を予防するという意味では立派な運動です。 地産地消という、元は野菜果物の供給改善から始まった運動ですが、それが建築材の世界にまで波及してきたわけですが、それなら木材は周辺地域から持ち込まれたものならば、当然他の地域材より安くならなければなりません。 当然高級材にしても、他と比較して安くなるはずです。 実情は、全く安くなっていないし、安い材木はいわゆる下材という未乾燥でアテがあり、住まい手が目の前にいれば、とても渡せないような材木が、市場を通して叩き売られています。正常な材木はどこに行くかというと、叩き売られた材木の代償として、多くの中間業者を経なければ市場に出ない仕組みになっています。 輸入材は、商社から直接市場に供給されるため、つまり中間搾取が比較的少ないため、正常な国産材より安くなるのです。しかも製品として輸入される木は、税関検査を通過しなければならないため、一定の品質を確保できます。 そうなると、国産材は下材ばかりが取引され、正常な材木では輸入材が台頭することになるのです。 この商循環が構築されると、国産材は廃れるしかありません。正常な材木は安く供給できるはずなのに、下材に圧迫されて、出口を失い、ますます高くならざるを得なくなるのです。
by MUKUZAIKENKYU
| 2007-01-16 10:21
|
検索
カテゴリ
全体
木 無垢材 自然 成功と裕福 木の家 国産材 無垢材 富裕層 建築家 不況克服 スローライフ リッチな人生 シックハウス 化学物質過敏症 ビジネス 材木・建築業界 マーケティング 倫理 日記 コラム 政治・経済・社会 学術 哲学 以前の記事
2017年 01月
2016年 11月 2016年 10月 2016年 09月 2016年 07月 2016年 06月 2016年 03月 2016年 01月 2015年 11月 2015年 10月 2015年 09月 2015年 08月 2015年 07月 2015年 04月 2015年 03月 2015年 02月 2015年 01月 2014年 11月 2014年 10月 2014年 09月 2014年 08月 2014年 07月 2014年 06月 2014年 05月 2014年 04月 2014年 03月 2014年 02月 2014年 01月 2013年 12月 2013年 11月 2013年 10月 2013年 09月 2013年 08月 2013年 07月 2013年 06月 2013年 05月 2013年 04月 2013年 03月 2013年 02月 2013年 01月 2012年 12月 2012年 11月 2012年 10月 2012年 09月 2012年 08月 2012年 07月 2012年 06月 2012年 05月 2012年 04月 2012年 03月 2012年 02月 2012年 01月 2011年 12月 2011年 11月 2011年 10月 2011年 09月 2011年 08月 2011年 07月 2011年 06月 2011年 05月 2011年 04月 2011年 01月 2010年 12月 2010年 11月 2010年 10月 2010年 09月 2010年 08月 2010年 07月 2010年 06月 2010年 05月 2010年 04月 2010年 03月 2010年 02月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 11月 2009年 10月 2009年 09月 2009年 08月 2009年 07月 2009年 06月 2009年 05月 2009年 04月 2009年 03月 2009年 02月 2009年 01月 2008年 12月 2008年 11月 2008年 09月 2008年 08月 2008年 07月 2008年 06月 2008年 05月 2008年 04月 2008年 03月 2008年 02月 2008年 01月 2007年 11月 2007年 10月 2007年 09月 2007年 08月 2007年 07月 2007年 06月 2007年 03月 2007年 02月 2007年 01月 2006年 12月 2006年 10月 2006年 08月 2006年 07月 2006年 06月 2006年 05月 2006年 04月 2006年 03月 2006年 02月 2006年 01月 2005年 12月 2005年 11月 2005年 10月 2005年 09月 2005年 08月 2005年 07月 2005年 06月 2005年 05月 2005年 04月 2005年 03月 フォロー中のブログ
メモ帳
最新のトラックバック
ライフログ
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||