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マイナスイオンと癒しについて 序

ここ数年の間に、マイナスイオン関連の商品がたくさん市場に出回っています。

 本題に入る前に、マイナスイオン製品が供給されるに至った背景について述べます。

 空気汚染と電磁波による室内環境の悪化が原因とされていますが、もっと具体的にいうと、多くの住宅メーカーや工務店が、この10数年間推し進めてきた「高気密」住宅=ペットボトル住宅によって、内装材や設備から発生する揮発製有害物質が家屋内に充満し、その結果住まい手の健康が侵され、全国でシックハウス症候群が惹き起こされたためです。

 建築基準法のいい加減さは、法律そのものの問題というより、その法律を作り立法化してきた国会議員と、それにへばりつく利害団体(業界)の思惑によって、これまでの法律が立案されてきたということです。
 これがいわゆる資本主義による立法構造です。今更良いの悪いのといっても始まりません。より多く資本を持つものに力が集中して、その資本の生産と再生産を常に更新しつづけるためには、法制度から行政にいたるまで、それを可能にするために「整備」しなくてはなりません。

 シックハウスを克服するためには、あえて機械設備に頼る前に、もっと生物学的な原点に立ち返るのでなくてはならないと思います。

 もぐら叩き的な立法と行政では、物事の本質を見失いかねません。時代の変遷によって、生活環境が悪化していることは分かっていても、それではそれ以前の時代の光景のどこが良かったのか、基本という伝統を見失うことなく、つまり二度と戻れない迷路にはまり込まないために、何を羅針盤として活かすかは、今の時代に生きる私たちの注意深い意志にかかっていると思います。

 ペットボトルのような高気密住宅がもてはやされ、それに高断熱をくっつけて、家の高規格住宅という仕様が出来上がりました。三高住宅です。
 その結果、家屋内には揮発性有害物質と二酸化炭素が充満し、シックハウス症候群という新種の病気が全国で発生しました。

 行政は慌てて換気対策を施す施策を実施しました。そしてVOC(揮発性有害物質)の濃度を規制しました。建材から発生するVOCは0.03ppm以下というものです。
 国際基準は0.008ppm以下なのに、いまだに日本だけはのんびりしています。

 高気密に疑いを持たない、また触れようとしない(業界の暗い意志のひとつでもあります)ために、法律で、また新たな設備設置を義務付けるようになりました。強制換気装置です。また部屋間の空気が移動できるように、ドアと床の間に一定の隙間をつくることと、温度差によって室外に換気できる設備も義務付けられました。

 このときから日本の家は、更に化石資源を消尽する、高エネルギー消費住宅に変質しました。「4高」住宅の誕生です。

 21世紀の時代の流れに真反対を向いた住宅を、どこまで造ったら本当のことに気がつくのでしょうか?立法から行政、業界の隅々まで、無知と無責任、無関心という三無主義で、脳みそと心が壊滅しているように思えてなりません。だれも、そこに住む住まい手というエンドユーザーのことを考えていないのではないのでしょうか。

 資本主義の構造的な陥穽に陥ると、人間としての感性が麻痺するようになります。ユーザーに届けるはずの商品は、いつの間にか自己満足と受け手の見えないサプライ競争の中で空転することになります。ホントだったら成り立たないのですが、市場が限定されていれば、まがい物でも何とか売れるのです。


 規制対象外として無垢材がありますが、そのため海外からの輸入材はフリーパスで日本の市場に入ってきています。無垢材でも、防虫対策のために殺菌処理の為にどっぷり薬剤に浸かった「無垢材」が取引されています。

 国内にもすばらしい無垢材があるにもかかわらず、何が何でも輸入無垢材を使うゼネコンや工務店がいます。その理由は簡単です。安いからです。法律上問題がなければ使用はできますが、ユーザーを無視した商取引がいまだにのさばっているのが建築業界のようです。
 でもこの点で最も罪深いのは、供給する側の商社であり、それを疑いもせずに市場に出す問屋や販売店です。ある意味そこまで、木や建築に対する無知や無責任が蔓延しているともいえます。

 本来マイナスイオンをたくさん供給するはずの木が、薬品によって汚染され、逆に室内空気の汚染源になっては、泣くに泣けない情けない事実です。そしてさらに、そういう木製品は、二度と大地に帰ることができなくなっていますが、無垢材だからという理由で、リサイクルされたり焼却されることによって、地球上の大気汚染に一役買うことになるのです。
by MUKUZAIKENKYU | 2007-02-01 11:54
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