季節の春とゲインの春がシンクロニシティ
木の案内舎ゲインのゴトウです。
今朝も清冽な大気は、地上のあらゆるところから生命溢れる氣を湧出させています。この10年間不順な季節循環でしたが、今年はほぼ順調な感じがします。油断はできませんが、・・・。 先週末から各方面から問合せが殺到しています。小倉南区のI建築工房さんのご指名をいただいて、早速図面から積算を完了させました。下関のクリニックに納める不燃木材なのですが、この分野、ゲインの得意技のひとつです。 ゲインでは、オリジナル製品の分野では不燃木材も取り扱っています。でも不燃木材と一概にいっても、実に多くの製品が市場に出回っています。樹種、性能、認可内容、既製品と特注品等々、建築家のリクエストにベストマッチする製品を提案することも、ゲインの大切な仕事のひとつでもあります。 ただこの不燃木材は、認可制度の下で監理されているため、メーカーによってキャパに相当な差が生じます。今回は米国製の輸入不燃木材、米国の方が日本よりはるかに厳しい認定基準を設けているためか、米国認可はほとんどフリーパスになるようです。 日本には、日本独自の樹種があります。日本の気候土壌に適応した木を素材に不燃化すれば、本当の不燃木材といえます。 今回のウェスタン・レッド・シダー(俗称 米杉)は、寒冷地で成長する樹で、抗菌や耐腐朽性に優れた木です。ただ米国の木に共通する性向として、樹脂分が少ない。日本の木の耐久性は樹脂に負うものが多いのですが、この木は含有成分だけが取り柄です。 それを除けば、他の特徴としては、軽くて作業性が高い、そして脆いところです。大木が多いため、木目が緻密で、美しいのですが、木目に沿って簡単に裂くことができます。換言すれば、輸送中の傷みが多いため、歩留まりが良いとはいえません。 私は個人的には好きな木のひとつではあるものの、行き過ぎた信用はよろしくないでしょう。日本の材木屋の過半数は、まともに木を知らない。だからこのウェスタン・レッド・シダーを「アメリカの杉」と勘違いして、高所作業用の足場板として供給して、転落事故を惹き起こしたことがありました。 知らない、周囲が使っているから大丈夫、法律で認可されているから安全、安いから売りやすい等々の発想からは、誤謬と混乱を発生させることはあっても、本当の意味での適材適所を実現することは絶対に不可能です。 材木屋はブローカーであってはならないのです。ブローカーのような商いをすると、間違いなく質的劣化を起こし、建築界の中でとことん低い地位に甘んじなければならなくなります。理由?安売りするしか能がないからです。 今、安岡正篤氏の著作を再読しています。「易経」を、恐る恐る読み始めたからです。以前挑戦して、挫折してしまったため、今度こそはスピードは遅くても、じっくり取組もうと決意しました。 氏の著作のひとつに『人生の大則』があります。そのプロローグは、ある意味その本のモチーフが凝縮されています。 この世界の全ては「大和(だいわ)」から成り立っている。「大和」とは、大いなる調和を表します。 陽の原理は、発現・分化・発展を本領とし、陰の原理は、統一調和・全体性・永遠性を本領としている。 現代は陽の原理である分化を本領とする西洋的思考=主知主義に偏している。主知主義に偏した結果の多くの弊害を解決するためには、東洋的陰原理を以て主知主義を止揚するしかないとしています。 精神分析学では、古典としてフロイトとユングが取り沙汰されることが多いのですが、後者のユングは、マンダラなどを通じて、東洋的な思想に影響されたせいか、「父なるもの」と「母なるもの」を図式的に陽と陰に分け、集合的無意識の論拠にしています。 ただユングの場合は、そのメッセージが比較的脆弱であったためか、後継者による解釈から、その業績が「社会への適応・不適応」というレベルで、現代に普及してしまいました。 このふたつの大きな潮流は、独自に発展しましたが、東洋的思想とは主知主義的に理解するものではありません。価値観が根本から異なるのですから、その価値体系に自らを嵌め込むことなくして、これを理解することは不可能でしょう。 日本の木、米国の木、それぞれに美しさや性能がありますが、私たちは日本人です。日本人のアイデンティティを離れて思考することは、人心の混乱と荒廃を招き寄せてしまいます。 木の案内舎ゲインは、その微妙な観点をはずすことはありません。 ホームページ→ http://www.h3.dion.ne.jp/~yamaiti/
by MUKUZAIKENKYU
| 2009-04-28 09:24
| 木の家 国産材 無垢材
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